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高森明勅
2013.1.15 14:47

雪が降ると「共同体」が見える?

昨日、私の地元ではこの冬初めての雪。 結構、積もった。 夕方になって雨にかわる。 すると、ジャリジャリという雪かきの音が聞こえ始める。 私も雪かき用のシャベルを持って外に出た。 お互いの顔も見分けられない薄暗い闇の中、近所の4、5人の 「お父さん」達が黙々と雪かきを続ける。 自分の家の周りだけでなく、付近一帯の雪を全て綺麗に除去する。 雪かきをするには、 雪が降りやんだばかりのこのタイミングが最適だ。 まだ柔らかい雪は、限られた量なら比較的楽々と取り除ける。 今のうちに取り除けば明朝、 凍りついた雪で転ぶ危険もなくなる。 小学生が1人、お父さんと一緒に凍える手で、 おもちゃのシャベルを使って雪かきを手伝っていた。 みるみる雪は取り除かれていった。 家族みんなが外出中の家や、大人の男が出掛けていたり、 何か取り込んでいる家などは、誰も手伝いに出て来ない。 しかし、そんなことにはお構い無し。 付近一帯の雪かきは、ほどなく終わった。 この間、男たちはほとんど言葉を交わさない。 用が済めば、各自の家にそのまま戻るだけ。 これが女性同士なら、恐らくかなり様子が違うだろうが。 その後、愛犬むーすけと散歩に出掛けて、面白いことに気がついた。 雪かきを行った跡が同じ住宅地でも、3種類に分かれている。 その1。 私の住んでいる辺りのように、付近一帯が全て除雪されている地域。 その2。 自分の家の周りだけ除雪してあり、 雪かきをしている場所としていない場所が、 入り交じっている地域。 その3。 ほとんど雪かきがされていない地域。 これらを少し詳しく見ると、 一戸建ての場合、自分の家の周りを雪かきしている比率が高いのに、 アパートやマンションだと余り雪かきをしていない、 といった傾向が見受けられたものの、 そうでないケースも、もちろんあった。 どうも、「経済的な裕福さ」とも関係なさそうに見えた。 たぶん、そこに住んでいる人達が、 互いに何らかの共感で繋がれているか、 どうかによって、違いが出ているのだろう。 もちろん、積雪が恒常的で量も多い地域では、 行政サイドで税金を投入し、 大規模な除雪の仕組みが整っているだろう。 だがそうした地域ではなく、 私の地元のようなめったに雪が降らない地域の場合、 こうした何げない雪かき作業からも、 その地域に仄かな形であっても「共同体」が 機能しているかどうかが、浮かび上がってくるのではないか。 取るに足らないことのように見えても、 少なくとも現代日本における「共同体」の姿を探る、 ささやかな手がかりにはなるはずだ。 小雨交じりの夜、愛犬の糞の片付けをしながら、 ふとそんな想念が頭をよぎった。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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